英語史研究会会報 第1号

 

1999年5月20日

   事務局

    810−8560福岡市中央区六本松4−2−1

    九州大学言語文化部田島研究室内 英語史研究会事務局 

    電話&FAX 092-726-4656(直通)

    E-mail: tajima@rc.kyushu-u.ac.jp

    発行人 田 島 松 二

 

目 次

 英語史研究会発足にあたって --------------- 田島松二

 自著紹介 -------------------------------- 隈元貞広

 はがき通信 ------------- 浦田和幸・許斐慧二・田中俊也

 第1回大会報告 --------------------------- 末松信子

 会員消息新入会員事務局から編集後記

 

英語史研究会発足にあたって

田島松二(九州大学)

昨秋より準備を進めてまいりました「英語史研究会」が多くの方々の熱心な参加を得て1999年3月27日(土)に発足いたしました。古英語、中英語、近代英語といった伝統的な英語史の研究分野はいうまでもなく、現代英米語研究、さらには文学テキストの語句の解釈等の研究をも射程に入れた英語の歴史的研究を行うことが主たる目的です。研究対象である英語が私たちにとって外国語であるという事実を想起し、訓古の学に基づいた英語の実証的、歴史的研究を一層推進したいと思います。歴史的視点、史的パースペクティブといったものは一朝一夕に身につけられるものではありませんが、すべての学問研究の原点ともいうべきものであります。その意味では、英語という言葉の歴史ではありますが、歴史研究そのものが研究目的であることは幸せ以外のなにものでもないと私は考えております。

形骸化した大規模な学会でもなければ、仲間内の研究会、読書会ともひと味違った、いわば学会と研究会の良さを併せ持ったような組織にしてゆきたいと思います。第1回大会はその意味で所期の目的は充分に達成できたのではないかとひそかに自負しております。先の設立総会で、早急に全国的な学会化を図ったらどうかとのありがたい提案もありました。今後の重要な検討課題にしたいと思います。既存の学会、研究会と共存・共栄をはかりながらも、独自の存在意義を有し、堅実な活動を維持するためには、会員数を40〜50名に、年2回の大会出席者を常時20〜30名位に増やす必要があります。文学、語学を問わず、広く英語の歴史に関心のある方々をお誘い戴ければ幸いです。

世話人を仰せつかった私も本研究会の健全な発展のために微力を尽くしたいと思っております。会員の皆様のご協力、ご支援を切にお願いいたします。

 

自著紹介

隈元貞広(熊本大学)

The Rhyme-Structure of the Romaunt of the Rose−A

A Comparative Study with Its French Original Le Roman de la Rose

(開文社出版、1999年6月刊)

Macrae-Gibsonが言うように、英語のように語の第一音節に強勢がくる言語にとっては脚韻という形式は不都合である。にもかかわらず、英詩は脚韻形式を取り入れていく。中英語期の詩人たちはどのようにして英語による脚韻詩行を作り、脚韻詩形の伝統を形成していくのか。八音節対韻の古仏語テキストRomanと、同詩形によるその逐語的翻訳である中英語テキストRomaunt-Aの脚韻語の種類や押韻の仕方を比較することによって英語脚韻構造の特徴の一端を示すことが本書の目的である。

第一章では脚韻のタイプと脚韻要素の種類・構造を比較している。Romanでは押韻音節部分のさらに前の音節までが同じであるいわゆる 'double' タイプの脚韻がむしろ半数以上であるのに対して、Romaunt-Aではそのようなタイプは僅かで、ほとんどが通常の 'simple' タイプである。

第二章では脚韻語と脚韻ペアの種類・構造を比較している。Romanでは名詞と動詞が最も中心的に働く(約80%)のに対し、Romaunt-Aではそのような極端な偏りは見られず、他の品詞も脚韻語としてよく働いている。Romanでは特に動詞が特徴的であり、Romaunt-Aでは副詞と代名詞がその特徴をなしている。名詞と形容詞は両テキストに共通した構造を示し、英語脚韻におけるフランス語要素の役割をよく示している。このような脚韻語の種類の特徴は脚韻ペアの組み合わせにもまた影響している。

第三章ではそれぞれの品詞によるペア形成の仕方を比較している。それぞれの品詞において両テキストに示差的な特徴が見られるが、特に動詞、副詞、代名詞においてその示差性が著しい。本章後半では、脚韻ペアの意味的・文体的な働きの比較も行っている。

 

はがき通信

浦田和幸(東京外国語大学)

私は英語を学び始めた頃から、なぜか「辞書」というものに魅せられてきました。現代英語の語法や英語史に関心を持つようになったのも、元々は辞書好きから始まっています。

目下、一般の英語辞書では、The New Oxford Dictionary of English (OUP, 1998)に注目しています。この辞書は随所に工夫があって、単に引くだけでなく「読み物」としても楽しめるものです。語法研究や英語史との関連に限っていえば、語法欄("Usage Notes")と語源欄("Word Histories";「語史欄」とすべきか)の記述はともに平易かつ有益。語法欄では用法の変遷や現状について客観的な情報を得ることができるし、また、語源欄では単に語源だけではなく、必要に応じて語義の変遷についても簡潔な説明が得られます。程よい通時的配慮はこの辞書の使用者に安心感を与え、かつ、現代のことばへの理解を深めるのに役立っているのでしょう。(本書については、『學鐙』(第96巻第4号)の書評頁に拙文を寄せています。)一方、辞書の実践面では、『リーダーズ英和辞典』の改訂作業に一執筆者として加わっていましたが、先頃第2版が出版されました。本研究会の事務局が置かれている九大六本松キャンパスで、かつて研究室にこもり作業に精を出した時期がありますので、感無量です。英語史から得る知識は現代英語への理解を深めるものであり、かつレキシコグラファーにとって不可欠であると思っています。

 

許斐慧二(九州工業大学)

このたびホームページ(http://www.lai.kyutech.ac.jp/~konomi/)を開設いたしました。見かけはあまりよくありませんが、かなりバラエティに富んだ内容になっております。英語史研究会に関する情報(英語史研究会ニュースといいます)もあります。事務局が研究会のホームページを用意されるまで会報等を掲載してゆきたいと思います。数年前に田島先生を中心とするグループでコンピューター・コーパスを利用した現代英米語法の研究をおこないました。その後の研究成果を随時紹介してゆく予定です。また、英語学とは直接関係はありませんが、手許の日本近代文学関係の資料を公開しています。本邦初のものも含まれております。是非一度ご覧になって下さい。

 

田中俊也(九州大学)

現代英語を歴史的に遡ることでその言語現象の説明を得ることができることに面白さを覚え、英語史へのアプローチを学生時代に始めた。最近ではその興味が高じてしまい、文献のある古英語の時代を遥かに超え、ゲルマン祖語、さらには印欧祖語に遡って英語に関連する現象を考察することが研究の中心となっている。ここ数年、その幾つかが現代英語の法助動詞にもなっている古英語の過去現在動詞 (preterite-present verbs)の歴史的背景を、Non-Brugmannianと呼ばれる新しい印欧語比較言語学のモデルから考察し続けている。古英語及びゲルマン語の強変化過去の形が、印欧語の完了形を受け継ぐものであることから、「〜してしまった結果、現在〜である」という形の再解釈を受けて、過去形(=印欧語の完了形)が現在形として用いられるようになったと主張する伝統的解釈とは全く異なる、新たな解釈が十分可能であるという論証を試みている。

 

第1回大会報告

末松信子(九大大学院)

英語史研究会第一回大会は1999年3月27日(土)午後2時より5時半まで、福岡市の九大六本松キャンパスで開催されました。設立総会で会則、活動方針の承認、役員の選出等が行われた後、以下の研究発表が行われました。

隈元貞広「Le Roman de la RoseとThe Romaunt of the Rose-Aの脚韻構造について」、壬生正博「中世における 'paradise' という語に付随する諸要素について」(以上、司会下笠徳次)、竹田津進「'be surprised at/by' 構文の歴史」(司会許斐慧二)、松元浩一「間接目的語を主語とする受動態(Indirect Passive)の発達」、末松信子「Jane Austenにおける不定代名詞の数の一致」(以上、司会家入葉子)。

いずれも、和やかな雰囲気の中で活発な質疑応答が行われ、発表者ならびに出席者双方にとって有益な議論が展開されました。発表会終了後、会場近くの居酒屋「海蔵」で懇親会が開かれ、親睦を深めることができました。研究会出席者(五十音順)は飯田一郎、家入葉子、隈元貞広、小城義也、許斐慧二、島村雅子、下笠徳次、末松信子、竹田津進、田島松二、野仲響子、松谷緑、松元浩一、壬生正博の計14名でした。

次回は9月下旬に開催されることになりました。なお、第一回大会に関する報告記事は『英語青年』6月号(「片々録」)に掲載されており、『英語教育』(「催し欄」)にも通知済みです。

 

会員消息 

家入葉子(神戸市外国語大学) 4月26日より11ヶ月間、英国マンチェスター大学で在外研究のため渡英。連絡先:Department of English and American Studies, University of Manchester, Manchester N13 9PL, England, U.K. (FAX: 001-44-161-275-3256)

浦田和幸(東京外国語大学) 丸善の『學燈』1999年4月号に書評「Judy Pearsall (ed.), The New Oxford Dictionary of English」を寄稿した。

宮原一成(大分高専) 4月1日付け山口大学人文学部助教授となる。

 

新入会員

1999年4月1日以降の新入会員の方々は次の通りです。

小松 義隆(九州大学大学院比較社会文化研究科修士課程)

東 真千子(九州大学大学院比較社会文化研究科修士課程)

 

事務局からのお知らせ

第2回大会を9月下旬の土曜日に予定していますが、日程は確定次第お知らせします。なお会場は第1回と同じ、福岡市中央区六本松の九大六本松キャンパスです。研究発表ご希望の方は発表要旨(400字程度)を添えて、8月31日(火)までに、事務局までお申し込み下さい。

連絡先(住所)・所属等の変更、新入会員の推薦・紹介等についても随時事務局までお知らせ下さい。

 

編集後記

新緑の美しい季節になりました。お元気でしょうか。5月の連休を利用して会報第一号の編集作業を行いました。見よう見まねの編集作業でこのようなものとなりました。いかがでしょうか。原稿をお寄せ下さった方々には心からお礼申し上げます。(その連休中に、博多どんたくの人並みにうんざりし急遽行く先を変更した許斐慧二会員がひょっこり事務局を来訪、夕刻を待ちかねるように前回の懇親会会場「海蔵」へ直行、忙中の閑を楽しみました。月曜から土曜まで毎日(場合によっては日曜も)在室しております。会員の皆様の来訪を歓迎いたします。)

本号は会則、会員名簿等研究会の根幹にかかわるものを掲載したために、予定していた研究ノートや書評等は実現に至りませんでした。今後さらに内容の充実・多様化をはかり、読んで楽しく且つ有益な会報にしたいと思っております。お気軽に原稿をお寄せ下さるようお願い致します。

名簿作成は事務局員の末松さんに、発送等は事務局員と新入会員の大学院生に手伝ってもらいました。

 (1999年5月5日 田島記)